後悔は積み重なる
遠方で一人暮らしをしていた叔父が亡くなった。いわゆる孤独死だった。
幼いころはかわいがってもらったのに、疎遠になっていたことをいまさら悔やんでいる。ありがとうを言えるあいだに伝えておかないといけないとわかっているのにできない。そして後悔は積み重なる。
幼いとき、自転車に乗れるようになったのがうれしくてあちこちへ行った。ある日、自宅からそう遠くないところだったけれども、自転車で転んで一人で盛大に泣いていた。すると制服を着たお姉さんが通りかかり、僕のそばに来て、大丈夫?と声をかけてくれた。ほっとした僕はいったん泣き止んだ。
ところが、かがんで僕を慰めてくれるお姉さんの胸元に大きな青い痣が見えた。こともあろうに、それまでそんなものを見たことがなかった僕はまたわんわん泣き出してしまった。
その後のことはよく覚えていない。泣きながら逃げるように自転車で家に帰ったと思う。ありがとうも言わずに。お姉さんはどんな表情をしていたのだろう。いったい何を思ったのだろう。
幼いころの無邪気な残酷さが、あのやさしいお姉さんにどんな傷を与えたのか、今となっては知る由もない。
記憶が残り続ける限り、後悔は積み重なる。