中年、無職、写真を撮る

ささやかな人生の、通り過ぎていく日々を記録する。

作家の努力


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伊坂幸太郎氏の小説を長らく読んでいなかったのだけれど、先日図書館で「グラスホッパー」単行本を借りて読んだ。

最初に書いておくけれど、本当に面白かった。売れるのも納得で、この著者の他の小説も是非読みたいと思わせる内容だった。

しかしながら、実は、小説冒頭、まさに最初の段落の日本語で私は躓きかけたのである。わかりにくい、と思った。わかりにくいということを理解せず読み流す人が多いのかもしれないけれど、少なくとも私にとってはわかりにくい日本語だった。

図書館に返却してから、日本語に煩い知人とその感覚を共有したいと思い、Kindleで文庫版「グラスホッパー」をダウンロードして驚いた。何かが違う。すんなり読めて、生き生きと情景を想像できる日本語になっているのだ。

どのように書き換えられたのか知りたくてまた図書館に行き、確認したらまた驚いた。かなり大きく書き換えられているのだ。

ちょっとした感動を覚えた。伊坂幸太郎氏ほどの売れっ子作家であっても、おそらく言葉の一つ一つに悩み、文章が世に出たあとも推敲を繰り返してより良いものにする努力を続けている。

あぐらをかくことなく研鑽を続ける伊坂氏の姿勢は尊敬に値するし、そのような真摯な姿勢が彼に今の地位をもたらしたのだろうと思う。彼に才能があったのは当然としても。