神秘体験
地下鉄サリン事件で逮捕され、その後死刑執行された広瀬健一という男がいる。
彼のことはWikipediaにとても詳しく記述されている。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E7%80%AC%E5%81%A5%E4%B8%80
多くの人命が奪われ今なお後遺症に苦しむ被害者もいるので、言葉を選ばないといけないのだけれど、少なくとも、私は自分のことを彼より善人だなどとは思えない。私は捕まってはいないけれど、条件が揃えば彼と同じようなことをしでかしたかもしれないという恐怖が、私の中にはある。
彼を含め多くの場合、オウム真理教に傾倒していく過程に神秘体験があった。
マントラを延々と唱えたり、断食したり、水中クンバカをやったりという修行の他にも薬物を使うこともあったとされているけれど、とにかく彼らは我々の日常とは異なる精神世界を見てしまった。
実は私は宗教とも薬物とも関係なく、おそらくそれに近いであろう精神状態を一度だけ経験している。
くわしくは書けないけれど、世界が光り輝くような、圧倒的な幸福感だった。私は唯物論者なので、これはやばいなと思いつつも、おそらく脳の何処かにスイッチがあるのだと理解した。たとえば違法薬物なんかはこういう状態を人為的に作り出すことができるのだろうと。
けれどもこの状態を、例えば宗教の道場で修行中に体感してしまったとしたら、私なら信仰の世界に転んでいたはずだ。おそらく教祖のマインドコントロールに抵抗するすべを私は持たなかっただろう。
広瀬健一と私は何が違ったのだろう。
答えはないけれど、善良な市民のふりをして今日も私は生きる。